AIを使ってみたいけれど、何から頼めばいいのか分かりません
AIという言葉を、毎日どこかで見かけるようになりました。取引先の社長が使い始めたらしい、同業者が業務を効率化したらしい。そういう話も耳に入ってきます。
それで一度、ご自身でも開いてみた。ところが画面に出てきたのは、まっさらな入力欄がひとつだけ。何を打てばいいのか分からず、そのまま閉じてしまった。
この「開いたけれど閉じた」という経験をされた方は、とても多いです。使いこなせなかったのではなく、入口の説明を誰もしてくれなかっただけだと思っています。
結論から申し上げます。AIは、新しいことを始めるための道具ではありません。いますでにやっている、面倒な作業を代わりにやってもらう道具です。ここを間違えると、いつまでも何を打てばいいのか分かりません。
まず、毎週やっている面倒な作業を1つ選ぶ
最初にすることは、AIの使い方を覚えることではありません。自分が毎週やっていて、少し面倒だと感じている作業を1つ思い浮かべることです。
たとえば、こういうものです。
お客様への返信メールの文面を考える。見積書に添える一言を書く。ホームページのお知らせを更新する。工事の写真に説明をつける。チラシに載せる文章を考える。前回と同じような内容の報告書を書く。
どれも、大した時間ではないかもしれません。ただ、毎週やっているなら年間では相当な時間になります。そして多くの場合、この手の作業は「気が乗らないから後回し」になりがちです。
AIが得意なのは、まさにこういう作業です。ゼロから何かを生み出すことより、すでにある材料を、決まった形に整えることのほうがずっと得意です。
逆に、経営の判断や、お客様との信頼にかかわる部分は任せられません。そこはこれまでどおり、ご自身の仕事です。
選ぶときの目安は、頭を使う作業ではなく、手が止まる作業です。何を書くかは決まっているのに、書き出しが浮かばなくて画面の前で止まる。そういう作業ほど、任せたときの効果が大きく出ます。
反対に、まだ何を決めるかが固まっていない仕事は向きません。それは考える作業であって、書く作業ではないからです。
頼み方は「誰に・何を・どういう形で」の3つ
作業が決まったら、次は頼み方です。ここでつまずく方がほとんどですが、覚えることは3つしかありません。
誰に向けたものか。何を書きたいのか。どういう形で欲しいのか。この3つを書くだけです。
よくあるのが、こういう頼み方です。
「集客について教えてください」
これでは、教科書のような一般論しか返ってきません。当たり前で、相手はあなたの会社のことを何も知らないからです。
同じことを、3つを入れて頼むとこうなります。
「千葉県流山市で外壁塗装をしている会社です。3年前に工事をしたお客様に、点検のご案内をはがきで送りたいと思っています。300字くらいで、丁寧すぎず、押しつけがましくない文章を書いてください」
これなら、そのまま手直しして使える文章が返ってきます。違いは能力ではなく、渡した材料の量です。
コツを一つ挙げるなら、人に頼むときと同じように書くことです。新しく入った社員に仕事を頼む場面を思い浮かべてください。「集客やっといて」とは言わないはずです。誰に向けて、何を、どういう形で。そう伝えるのと同じことを、そのまま打てば足ります。
文章がうまく書けなくても問題ありません。話し言葉のままで構いませんし、順番が前後していても伝わります。丁寧に整える必要があるのは、返ってきた文章のほうであって、頼むときの文章ではありません。
もう一つ、自社のことを毎回説明するのが面倒であれば、会社の紹介文を3行ほど用意しておいてください。地域、業種、主なお客様。これを頼み事の頭に貼り付けるだけで、返ってくる内容がぐっと近づきます。
頼むときに入れる3つ
□ 誰に向けたものか(お客様の年代、地域、すでに取引があるかどうか)
□ 何を書きたいのか(案内、お礼、お詫び、説明のどれか)
□ どういう形で欲しいのか(文字数、かたさ、はがきかメールか)
この3行を先に書いてから、本文の依頼を書きます。順番はこのとおりで構いません。
出てきた文章は、そのまま使わない
ここが、いちばんお伝えしたいところです。
AIが返してきた文章は、8割できあがった下書きだと思ってください。完成品ではありません。
まず、日付や金額、社名といった事実は必ずご自身で確かめてください。もっともらしい顔をして間違いが混ざっていることがあります。特に、制度や法律にかかわる部分は要注意です。
次に、言い回しを自分の言葉に直します。読んでみて「自分はこういう言い方はしないな」と感じる箇所があれば、そこは直したほうがいいです。お客様は、あなたの言葉づかいを覚えています。
この2つをやっても、ゼロから書くよりずっと早く終わります。白紙から書き始める時間がなくなるだけで、体感はかなり変わります。
もう一つ気をつけたいのが、お客様の名前や住所、契約の中身といった情報の扱いです。入力した内容がどう扱われるかはサービスによって違いますので、個人が特定できる情報は打ち込まないのが無難です。「60代の男性のお客様」のように、ぼかした書き方で足ります。
逆にいうと、そのまま使うつもりで見ると、あらが目について「使えない」と感じてしまいます。下書きを作ってくれる相手だと思って付き合うと、ちょうどいい距離になります。
最初の1週間でやること
いろいろな使い方を一度に試そうとすると、たいてい続きません。最初の1週間は、次の3つだけで十分です。
1つの作業だけに絞る。選んだ作業以外には使わないと決めてください。あれもこれもと広げると、どれも中途半端になります。
同じ頼み方を使い回す。うまくいった頼み方の文章を、メモ帳に保存しておいてください。次からはそれを貼り付けて、中身だけ変えれば済みます。毎回考え直す必要はありません。
うまくいかなかったときは、材料を足す。返ってきた内容がずれていたら、頼み方に情報が足りていません。「もっと短く」「お客様は60代の方です」と付け足していけば、近づいていきます。会話をやり直せる相手なので、一発で決める必要はありません。
1週間続けてみて、その作業にかかる時間が半分になっていれば成功です。そこで初めて、2つめの作業に広げてください。
まとめ
AIを使ってみたいけれど何から頼めばいいか分からないときは、覚え方の順番が逆になっていることがほとんどです。
先に道具を覚えるのではなく、自分の面倒な作業を1つ決めることから始めてください。頼み方は「誰に・何を・どういう形で」の3つだけです。返ってきた文章は下書きとして受け取り、事実と言い回しだけ自分で直す。
この形なら、今日から始められます。うまくいかなくても失うものはありません。まずは今週いちばん面倒だった作業を、1つ思い出すところからです。
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