AIに社内の資料を入れるのが怖い。どこまでなら大丈夫ですか
AIに文章を作らせてみたい。でも、うちの見積書や顧客の名前を打ち込むのは、なんとなく怖い。
この「なんとなく怖い」で止まっている会社が、いちばん多いように思います。
怖がるのは正しい感覚です。ただ、怖いから一切使わない、という判断はもったいない。入れてよいものと、入れてはいけないものを先に分けておけば、大半の仕事は安全に任せられます。
結論から申し上げます。難しい設定の話より先に、「これは入れない」というリストを1枚作ってください。それだけで、社内の誰が使っても事故が起きにくくなります。
何が心配なのかを、はっきりさせます
不安の中身は、だいたい2つに分けられます。
1つ目が、入力した内容がそのサービスの学習に使われるのではないかという心配。2つ目が、入力した内容がそのまま外に漏れるのではないかという心配です。
この2つは別のものです。学習に使われることと、他人に見えることは同じではありません。混ざったまま「怖い」となっている場合が多いので、まず分けて考えてください。
実際にご相談をうかがうと、心配しているのは1つ目なのに、対策として考えているのは2つ目向けのもの、ということが起きています。どちらが不安なのかで、打つ手が変わります。
そして、どちらの扱いもサービスごとに違います。同じ会社のサービスでも、無料のものと法人向けのもので扱いが変わることがあります。設定画面で切り替えられるものもあります。
ですので、ここは一律に「AIは危ない」「AIは安全」とは言えません。使うサービスの利用規約と設定を、一度確認するのが出発点になります。
それでも、入れないものは決まります
とはいえ、規約を読み込む時間はない、という会社がほとんどだと思います。
現実的なのは、サービスの仕様がどうであれ入れないものを決めてしまうことです。仕様は変わりますが、この線引きは変わりません。
入れないものは、次の4つで足ります。
個人が特定できる情報。氏名、住所、電話番号、メールアドレス。従業員のものも含みます。
取引先から預かった情報。図面、仕様書、価格表。守秘義務の対象になっているものです。
まだ公になっていない自社の情報。発表前の商品、進行中の交渉、未公開の決算。
パスワードや鍵の類。論外に思えますが、うっかり貼ってしまう事故は実際にあります。
この4つを外に置くだけで、残りはかなり自由に使えます。逆にいうと、この4つさえ守れていれば、細かい設定に詳しくなくても大きな事故は起きにくい、ということです。
これは入れない(1枚にして貼っておく)
□ お客様や従業員の名前・住所・連絡先
□ 取引先から預かった図面・仕様書・価格表
□ 発表前の商品、進行中の交渉、未公開の数字
□ パスワード、口座番号、鍵になる情報
迷ったら入れない。これで困る場面はほとんどありません。
伏せれば使える場面が、かなりあります
ここで諦めなくて大丈夫です。そのままでは入れられないものも、形を変えれば使えます。
いちばん簡単なのが、置き換えです。
「株式会社まるまる様への見積書」を「A社への見積書」にする。金額を実際の数字ではなく、近い仮の数字にする。住所は「千葉県内」で足ります。
文章の書き方を相談したいだけなら、中身が本物である必要はありません。形が同じなら、返ってくる助言は同じです。
お客様からの問い合わせメールに返信を書きたいときも、名前と固有の事情を伏せた要約を渡せば足ります。「工期の遅れについて謝罪と説明を求められている」だけ伝われば、文面は作れます。
この置き換えを社内で共有しておくと、みんなが同じやり方で使えるようになります。誰かが判断に迷うたびに社長へ聞きに来る、という状態も減ります。
もう一つ、写真やファイルをそのまま読み込ませる機能にも同じ考え方を当てはめてください。画面に文字を打たなくても、画像の中に名前や金額が写っていれば同じことです。ここは見落としやすい部分です。
安心して任せられる仕事から始めます
最初の一歩としておすすめしているのは、そもそも秘密が関わらない仕事です。
ホームページに載せる文章の下書き。求人票の書き方。あいさつ文。社内向けの手順書のたたき台。
どれも公開が前提のものなので、悩まずに使えます。まずここで手に馴染ませてから、判断が必要な領域に進むほうが安全です。
逆に、最初から契約書のチェックや個別のお客様への回答を任せようとすると、線引きの判断が毎回発生します。慣れる前にそこへ行くと、続きません。
順番としては、公開してよい文章で1か月ほど使ってみる。そのあいだに、どの作業が向いていてどれが向かないかが見えてきます。その感覚ができてから、判断の要る仕事に広げるほうが失敗しません。
AIそのものの始め方については、AIを使ってみたいけれど、何から頼めばいいのか分かりませんにも書いています。
社内で使うなら、紙1枚のルールを作ります
社長おひとりで使う分には、頭の中の線引きで足ります。従業員にも使わせるなら、書いたものが要ります。
立派な規程は要りません。A4で1枚あれば十分です。何ページもある文書は、作るのも大変ですし、誰も読みません。
書くことは3つだけです。使ってよいサービスの名前。入れてはいけないものの一覧。困ったときに聞く相手の名前。
とくに3つ目が効きます。迷ったときに聞ける人が決まっていれば、黙って使われるより安全です。禁止だけを並べると、隠れて使うようになります。個人のアカウントでこっそり使われるほうが、よほど危ない状態です。
そして、AIが出した文章をそのまま外に出さないことも、あわせて決めておいてください。事実関係の誤りが混ざることがあります。最後に人が読むという一行を入れておくだけで、防げる事故があります。
紙1枚に書くこと
1 使ってよいサービスの名前(複数あるなら全部)
2 入れてはいけないものの一覧(上の4つ)
3 迷ったときに聞く相手の名前
4 出てきた文章は、外に出す前に人が読む
これ以上を最初から作ろうとすると、たいてい完成しません。
まとめ
AIに情報を入れてよいかどうかは、サービスの設定を調べるより先に、自社で「入れないもの」を決めるほうが早く進みます。
個人が特定できる情報、預かりものの情報、未公開の情報、パスワード。この4つを外せば、残りはかなり自由に使えます。
そして、そのままでは入れられないものも、名前を伏せて数字を仮にすれば使えます。ここを知っているかどうかで、使える範囲が大きく変わります。
従業員にも使わせるなら、A4で1枚のルールを作ってください。禁止事項だけでなく、迷ったときに聞く相手を書いておくことをおすすめします。
むらたすでは、こうした社内のルール作りから、実際にどの業務を任せるかの設計までご相談を承っています。ご自身で作られたルールを見せていただいて、抜けている部分だけをお伝えする、という関わり方でも構いません。
まずは、いま手元にある文章のうち「これは公開しても困らない」ものを1つ選ぶところからです。
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